フェイントの動作は知っているのに、試合では相手に読まれる、使うタイミングが分からない。こう感じる中級者ほど、フェイントを個人技ではなくチームの攻撃設計として考える必要があります。
フェイントは、その前後にある普通の攻撃があってこそ機能します。強打を警戒させた後のフェイントは守備を崩しますが、最初から単発で使うだけでは相手に対応されやすくなります。
この記事では、セッターとアタッカーが意図を共有し、配球の流れの中でフェイントを効かせる方法を整理します。
セッターがトスの種類・高さ・タイミングを使い分け、アタッカーが「見せる攻撃」と「使うフェイント」を使い分ける。この共有ができると、フェイントは実戦で使える武器になります。
レク・インディアカが初めての方は、まず以下の記事を読んでおくと安心です😊



この記事で押さえること
フェイントを単発の小技にせず、配球の流れとして使うための軸を先にそろえます。どの場面で相手を動かすかを意識して読み進めてください。
| 役割 | 試合中に見ること | フェイント時の行動 |
|---|---|---|
| セッター | 相手守備が後ろに下がったか | 高めで間を作るトスを選ぶ |
| アタッカー | 強打を警戒している守備の重心 | 強打のモーションからネット際へ落とす |
| 周囲の選手 | 拾われた後のカウンター位置 | フェイント後すぐ守備へ切り替える |
フェイントを使う前に、相手守備をどこへ寄せたいかを決めておくと、単発のプレーで終わりにくくなります。




1. フェイントが「チームの設計」である理由
フェイントは個人のひらめきだけに任せると、相手に読まれやすくなります。まずセッターとアタッカーの関係から整理します。
セッターの動きがアタッカーの選択肢を決める
インディアカの攻撃は、1打目(レシーブ)→2打目(トス)→3打目(アタック)の3段階で成り立っています。フェイントを使えるかどうかは、2打目のトスの質と種類によって大きく左右されます。
高くゆっくり上がったトスはアタッカーに「間を作る」余裕を与えます。相手の守備にも「構え直す時間」が生まれます。この構え直しの瞬間にフェイントを打つと、守備者は後退した姿勢から前に出る切り返しが難しくなります。一方、速いトスや低いトスでは、アタッカー自身の体勢に余裕がありません。精度の高いフェイントは難しくなります。
つまり、「フェイントを打ちやすいトスを上げるセッター」の意識が、チームのフェイントを使う頻度を左右します。
「見せる攻撃」と「本命の攻撃」を設計する
チームとしてフェイントを使うには、まず「見せる攻撃」と「本命の攻撃」の役割を意識的に割り振ることです。
例えば、ラリーの中で3〜4回強打を続けて相手の守備を後方に引き寄せます。相手が「またジャンプアタックが来る」と判断し始めたタイミングで、セッターが高めのゆっくりしたトスを上げ、アタッカーがネット際にソフトに落とす。これが「設計されたフェイント」です。
この場合、強打は点を取るためではなく「フェイントを活かすための布石」として使われています。強打でも点が取れる可能性はありますが、チームの主目的は「守備を動かして、フェイントで仕留める」という流れを作ることです。




2. フェイントを活かす配球パターン
フェイントを効かせるには、その前の配球で相手を動かしておく必要があります。前後、左右、テンポの順に確認します。
パターンA:ロングとショートの使い分け
最もシンプルで再現性が高いのは「奥への長打とネット際のショート」を交互に組み合わせる配球です。
- ジャンプアタックやロング返球で相手の守備を後方に引き込む(2〜3回)
- 相手の前衛が後方支援に移動し始めたタイミングで、セッターが高めのトスを上げる
- アタッカーがジャンプアタックのモーションからネット際にソフトに落とす
このパターンのポイントは「セッターが高めのゆっくりしたトスを意図的に選ぶ」ことです。普通のトスでは間が生まれず、フェイントを打つ時間の余裕がアタッカーにありません。「今はフェイントを使うトスを上げる」という合意をセッターとアタッカーで事前に持っておくことが重要です。
パターンB:コースの左右切り替えを見せてから
左右方向への配球の切り替えを布石に使うパターンです。
- 2番よりに中央へ落とす攻撃を繰り返す
- 相手の守備が2番との間を警戒する
- セッターが今度は左側への軌道にトスを上げ、3番を2番方向へ引きつけ、アタッカーがクロス方向へ打つ
または逆に、「クロスにフェイントを何度か打って相手の前衛をサイドライン際へ寄せる、その後にストレート気味に中央へ強打で抜く」という順序も有効です。フェイントが本命の場合もあれば、「フェイントの見せ方」が本命の強打の布石になる場合もあります。この2方向の選択肢を持つことで、相手は守備位置の判断が困難になります。
パターンC:速攻とゆっくり攻撃の混在
トスのテンポを意図的に変えることでもフェイント効果が生まれます。速いテンポで3打目を打ち続けると、相手の守備は「速い球が来る」前提で構えます。このタイミングで、セッターがゆっくり高めのトスを上げてアタッカーに間を与えると、守備は「いつ来るか分からない」状態になります。
この「テンポのフェイント」はアタッカーの動作ではなく、セッターのトスのタイミングによって作り出されます。セッターが試合の流れを読みながらテンポを操作することで、アタッカーは普通の強打を打つだけでも「フェイントに近い効果」が得られます。
| 配球パターン | 使う状況 | 事前に決めること |
|---|---|---|
| ロングとショート | 相手が前後どちらかに寄り始めた | 何本ロングを見せてからショートを入れるか |
| 左右切り替え | 守備が中央や片側に集まった | 次に使うサイドと本命コース |
| 速攻とゆっくり攻撃 | 相手が同じテンポに慣れた | 低めなら速攻。高めなら間を作る |
表の3パターンは、試合で一度に全部使う必要はありません。まずはチームで一つ選び、同じ狙いを共有して試してください。
3. チームで事前に決めておくこと
試合で使うなら、複雑なサインよりも前提の共有が先です。試合前に合わせておく内容を整理します。
合図やサインは不要、前提共有が大切
実戦でサインを使う必要はありません。代わりに、練習段階でチームとして「どういう流れの中でフェイントを使うか」を言葉にしておくことが重要です。
例えば「2本ジャンプアタックを打った後、次がフェイントのトスを上げるよ」という取り決めをチームで共有しておくだけで、試合中にアタッカーは「次のトスがゆっくり高ければフェイントを選択する」という判断ができるようになります。
逆に、何も取り決めがないと「アタッカーが突然フェイントを選んだが、相手に取られてしまった」という事態が起きます。これは技術の問題ではなく、チームとして流れを設計していなかったことが原因です。
試合前に確認すること
- □ フェイントの前に見せる攻撃を1つ決めている
- □ セッターが「フェイント用の高めのトス」を理解している
- □ 拾われた後に誰が最初の守備へ戻るかを決めている
セッターの「意図を持ったトス」が全ての起点
フェイントを含む攻撃設計において、セッターの役割は「次に何を打つか」を知りながらトスを上げることです。アタッカーが何を打つかを把握しているセッターは、トスの高さ・速さ・位置を意図的に変えてアタッカーの選択肢を整えます。
「打ちやすいトスを上げれば何でもいい」という発想から、「今のラリー展開でフェイントが有効か、強打が有効かを判断してトスを上げる」という発想にセッターが移行します。すると、チームの攻撃の多様性は一気に広がります。
補足解説:フェイントが通じない相手への対応
フェイントを使ってもなかなか決まらない場面があります。相手の前衛が前に詰めて守り、フェイントをすべて拾われる場合です。このような相手には、フェイントの頻度を下げて「フェイントを警戒させた上で、奥への強打で仕留める」という逆転の発想が有効です。
フェイントと強打は「どちらかを使う」のではなく、「相手を動かすために使い分ける」ものです。フェイントが効かない相手に強打が刺さり、強打を警戒した相手にフェイントが決まる。この「選択肢のある攻撃」こそが、チームの攻撃力の本質です。
クロスとストレートを使い分ける意義もここにあります。インディアカのコート(横6m)を左右方向に使い切ることで守備の横カバー範囲を超えた攻撃が可能です。クロス方向(アタッカーからみて逆のサイドライン側)への打球は角度がつき、守備者が追いにくいコースになります。
具体例:試合での失敗と成功
ここでは、フェイントが単発になる場合と設計される場合を比べます。違いが出る場面を見ます。
失敗例:アタッカーがその場の判断でフェイントを使う
セッターも他のチームメンバーもフェイントを予期していない状況でアタッカーが単独でネット際に落とす。相手に拾われた場合、チームの守備態勢がフェイント後のカウンターを想定していないため、ピンチになりやすいです。フェイントは「決まれば得点、外れれば終わり」の一発勝負になります。
成功例:セッターが流れを読んで設計したフェイント
直前3打で強打を使い、相手の守備が後方に寄ったことを確認したセッターが「今がチャンス」と判断して高めのゆっくりしたトスを上げます。アタッカーはそのトスの意図を読み取り、ジャンプアタックのモーションを見せながらネット際に優しく落とす。相手の前衛は後退していてネット前に戻りきれず、得点になります。
まとめ・次の一歩
フェイントはチームの配球設計の中に組み込むことで、はじめて実戦での得点に直結する武器になります。「いつフェイントを使うか」をチームで言葉にして共有しておくことが、実戦での成功率を高めます。
次の練習では、セッターとアタッカーが2人で「何本強打した後にフェイントのトスを上げるか」という小さな取り決めを1つだけ試してみてください。試合形式でそのパターンを意図的に試すことで、フェイントの「設計」という感覚が体験として積み上がっていきます。
